神様のいたずら
先週の三連休。
真ん中の、1月8日。
度重なる出張の度に隙を伺い、ことごとく目論見は崩れ去った去年の終わり頃。
年が明け、惜しいことに放送は終わってしまったが、あの場所への想いは続いている。
おそらく、タイミング的にこれが最後かもしれない、熱は冷めやらぬうちに…。
ということで、平時の日曜日の起床時間より6時間早く目を覚まして、
朝もやの中進む快速電車から降り立った場所は、博多駅。
みどりの窓口で自由席往復券2枚を買い求め、
構内のファミリーマートで小さな弁当を買い、新大阪行きの新幹線『みずほ』に乗る。
博多を出発して1時間もすれば、広島駅に到着する。
そこで呉線に乗り換えて…昼過ぎにはあっちに着くだろう。
日が傾きかけてきた頃に戻って、呉で途中下車して何か美味しいもの食べて帰れれば幸せだ。
道中、そんな夢想に浸っていた。
浸りきっていた。
広島駅で降りてからホームを歩く間もしばし呆けていた。
…帰りの切符、所持金、クレジットカード、ありとあらゆる貴重品が詰まった財布を新幹線に忘れた、という事実に気付かされるまでは。
すぐさま、広島駅新幹線改札口近くの駅員さんに事情を説明する。
先ほど乗った車両は次に福山駅で停車する。
その間に座席をチェックして探してもらうことになった。
万が一、その場で見つかったとしても、終着駅の新大阪まで受け取りに行くか、郵送することになる、という説明だった。
しかし帰りの切符も財布の中なので、どっちみち、新大阪まで行く他ない。
その時点で、先程までふわふわ妄想していたスケジュールは、完璧に破綻した。
とりあえず、福山駅で見つかったかどうかの連絡を待つことになった。
ホームで待つこと十数分。
…もし改札を出た後に気づいてたら、更に大事になってたなぁ…
などと、一日の予定が崩壊してヤケクソで逆に変な余裕も見せていた。
福山駅からの連絡がきた。
財布は、見つからなかったと。
最悪の結末が見えてきた。
ただ、停車中の僅かな間のチェックなので、見落としてる可能性もあるそうだ。
とにかく、新大阪駅に到着するまではまだ解らない。
これ以上、ここで待っていても無駄なので、
次の新幹線『のぞみ』に乗って、新大阪まで追いかけることになった。
のぞみの車内は先程とは打って変わって、混雑していた。
もし、新大阪まで行って財布が見つからなかったら。
もし、新大阪で見つかって、受け取ったら。その後は。時間は。今日の残り時間は。
気が気でない時間がしばらく続いた。
突如、携帯に着信があった。
新幹線はトンネル走行中でも通話出来るなんて知らなかった。
広島駅からの電話。
財布は、見つかったそうだ。
乗客が届けてくれたそうだ。
中身もどうやら無事らしい。
良かった。ここは、日本だ。
16両編成の『のぞみ』は高速で突き進む。
広大な平野のど真ん中を。山々に刳り抜かれた風穴を。地方都市の境目を。
新大阪駅に着いたのは、13時。
工事中で混雑の極みに達するホームを駆け巡り、財布を受け取って、
博多行きの新幹線『ひかりレールスター』に飛び乗ったのは、
それからまだ20分程しか経っていなかった。

